心理的安全性を向上させるための6つのヒント~心理的安全性とは? <後編>

ヒント❺ 心理的安全性を高めるためのリーダーやフォロワーの役割

心理的安全性の7つの質問

ここで、組織において心理的安全性を高めるためにリーダーやフォロワー(メンバー)が果たすべき役割について考察したい。
まず、リーダーは何をすれば良いのか。組織のあるべき状態を考える上では心理的安全性の提唱者であるエイミー・C・エドモンドソンの「心理的安全性の7つの質問」が役に立つであろう。

①このチームでミスをしても、非難されることはない
②このチームでは、問題や難しい課題を提起できる
③このチームでは、他者と考え方が違うという理由で拒絶されることがある(拒絶されない方が良い)
④このチームでは、リスクを取っても安全だと感じられる
⑤このチームでは、周囲のメンバーに助けを求めにくい(助けを求めにくくない方が良い)
⑥このチームの誰も、私の努力を意図的に妨げたりしない
⑦このチームでは、自分の特有のスキルや才能が評価され、活かされている


このように、粗削りで斬新かつ挑戦的な意見を提案してもそのような考えや姿勢を持つこと自体が肯定され、個々の尊重と協力・支援が得られるということを示していくことが重要である(提案内容の採否と取り組み姿勢の評価は別のもの)。

リーダーの役割

次にリーダーがメンバーのアイデアを発展させたり、補完・強化していく能力・スキルを高めることについてである。メンバーとしては沢山アイデアを提案しても毎回不採択になるとモチベーションが落ちていく。もちろん、メンバー自身の提案力が高ければ不採択となる確率は減るし、提案力向上のための教育等も有益であるが、リーダーとしては、その粗削りなアイデアを活かし発展させていく自分自身の能力・スキルを上げていきたい

そのためには、ビジネスプランニングや問題・課題解決力、部下のアイデアをブラッシュアップしていくためのコーチング力、チームとしての問題・課題解決やアイデアの実現へ向けたファシリテーション力を高めたい。これにより、心理的安全性の向上と組織成果創出の好循環が生まれる。

メンバーの役割

チームメンバーのフォロワーシップについても述べておく。フォロワーシップの提唱者であるカーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授の調査によると、組織成果に対して「リーダー」が及ぼす影響力は1~2割であるのに対して、「フォロワー」が及ぼす影響力は8~9割にものぼるという結果となった。

職場の心理的安全性についても同様で公式に職場の心理的安全性を高めようと決めたり、リーダーが言ったとしても、フォロワー(メンバー)の意識や態度が伴っていないと発言者へマイナスの影響が強く及ぶものと考えられる。また、メンバーの態度・姿勢・発言がリーダーに対して影響を与えることについても能動的に認識すべきである。そして、ベテランクラスのメンバーには前述のリーダーに必要とされる能力・スキルについても磨き始めて、提言や補完を含めたチーム内での活用を推進していただきたい。

ヒント❻ 心理的安全性と生産性向上への寄与

生産性向上との関係

さいごに、心理的安全性と生産性向上の関係について考察したい。

「心理的安全性」の考え方が世界的に普及した要因として、グーグル社の影響を外すことはできないであろう。グーグル社は生産性が高いチームの特性を明らかにするための社内調査「プロジェクト・アリストテレス」において、生産性が高いチームの特性を分析した。その結果、「心理的安全性が高いこと」が最も重要であるということが導き出され、ビジネス界の興味・関心・普及に結びついていった。
さて、心理的安全性が生産性向上へ結びつくには、その橋渡しとなる作用が必要となるが、どのようなものが考えられるのだろうか。前編と後編のこれまでの連載内容にも関連させながら私なりに考えてみたい。

①主に生産性の分子(アウトプット・付加価値)や事業の発展・拡大に影響する要素。
・新しいアイデアの創出やアイデアのブラッシュアップによるイノベーションの促進新たな事業案、マーケティング案の創出。
・個人と組織がグロースマインドを持つことにより、学習やノウハウの取得が進み、「できない理由や言い訳を考える」「どうすればできるのかを考える」ようになり、成長力が高まる
・上司や周囲のメンバーの顔色を伺ってばかりの内向き志向を無くし、お客様や社会にとって価値ある仕事にフォーカスする外向き志向へシフトできる。


②主に生産性の分母(インプット)やリスク削減に影響する要素。
・無駄だとわかっていても上司や既存のやり方に迎合し、発言しないというようなことがなくなり、改善が進む
・不安なこと、曖昧なこと等を上司やメンバーに安心して確認できるようになり、ミスを防ぐことができるようになる。
・コンプライアンス問題等を含め、組織上重要なリスク要因に声をあげ、リスクの早期予防や早期改善に結びつけられるようになる。


③①②に共通して影響する要素。
・従業員のモチベーションやワークエンゲイジメントが向上し、仕事のパフォーマンスにプラスの効果が生じる。
・組織・人間関係に起因する離職が減り、戦力ダウンを回避できる。会社の評判が良くなり、有能な人材を採用しやすくなる。
・チーム内の多様性や結束力が強くなり、組織力が強化される。

一人一人にとっても最重要課題

以上、心理的安全性が生産性向上へ寄与すると考えられる代表的な作用について述べた。
ここまで論説してきた通り、心理的安全性の向上は単なる勤労施策の一つではない。

心理的安全性は経営として自社の変革や未来を考える上で重要な意味や価値を有していること新しい時代の人事政策を考える上でも避けて通ることができないテーマ・課題であること、管理職や一人一人のビジネスパーソンにとっても最重要課題の一つであることを理解していただけたのではないだろうか。(終わり)

生産性新聞2025年6月25日号、7月5日号:「生産性を高めるビジネススキル Part26」掲載

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