従業員満足度(ES)調査・エンゲージメント調査とは?~4つの従業員タイプからわかりやすく解説~

従業員満足度(ES)調査とは?

従業員満足度(Employee Satisfaction:ES)調査は、従業員一人ひとりが会社や職場、仕事に関して、どのような認識や感情を持っているのかを定量的に把握する調査です。客観的な事実というよりも従業員の“今思う”主観的な認識や評価を測定する点に特徴があります。
世の中には多くのES調査サービスが提供されており、設問構成もそれぞれ異なります。多くの場合、会社・職場・仕事などの領域に関する複数の設問を通じて測定します。例えば、日本生産性本部が提供する従業員満足度調査「NiserES」では、下図に示す3つの領域(会社・職場・仕事)、13の視点(会社への共感・評価・給与・上司との関係・仕事の充実など)から構成された設問を通じて、ESを測定します。会社への共感や給与、評価、福利厚生、働き方、上司との関係、仕事の充実度、仕事の負荷などに対する従業員のホンネから、組織の状態を把握できるように設計されています。

従業員満足度(ES)調査の目的

ES調査の目的は、単に「従業員が会社に対してどれくらい満足しているか」を確認することではありません。ES調査から組織の現状(従業員のホンネ)を可視化し、組織のどこに問題があり何を優先的に改善すべきかを明らかにすることです。組織課題の解決に向けた具体的施策につなげることが目的と言えます。
多くの企業で、「離職者の増加」といった顕在化している問題、「職場の雰囲気が良くない」といった感覚的な問題を持っているのではないでしょうか。ES調査は、このような問題や、そもそも気づいていなかった潜在的な問題を定量的に可視化し、職場環境の改善を通じて、従業員の意欲や活力を引き出し、企業業績向上・生産性向上・人材定着につなげていくための手段です。

例えば、
・全社的に「会社への共感」度合いが低い
・20代の若手で、「能力開発機会」に対する満足度が低い
・30代の中堅で、「評価・処遇」への納得感が低い
・特定部門で、「上司への信頼」が著しく低い

といった傾向が見えることによって、「どの層(年代や部門など)・どのテーマに課題があるのか」を把握することができます。その結果、企業理念の浸透に向けた経営層と従業員の対話機会の創出や評価制度・運用の見直し、マネジメント強化など、的確な施策を検討できるようになります。

エンゲージメント調査とは?

昨今は、ES調査とは別に「エンゲージメント調査」という言葉を耳にする機会が多いかもしれません。エンゲージメント調査が注目されている背景には、2020年9月に経済産業省が公表した「人材版伊藤レポート」を契機とした人的資本経営への関心の高まりや、ESG投資の拡大があります。さらに、2022年5月に公表された「人材版伊藤レポート2.0」では、企業価値向上のためには従業員が単に組織に満足する状態にとどまらず、やりがいや働きがいを感じ、主体的に組織へ貢献しようとするエンゲージメントを高めることが重要であると示されています。

そもそもエンゲージメントとは何か?

エンゲージメントと言っても、カスタマーエンゲージメントやステークホルダーエンゲージメント、サプライヤーエンゲージメントなど、ビジネス領域では対象や目的によって種類があります。本稿では、「人事領域におけるエンゲージメント」がテーマとなるため、その定義を整理します。厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト(ワークエンゲージメントとは | 働き方・休み方改善ポータルサイト)」における定義がわかりやすくまとまっています。

(参考:ワークエンゲージメントとは | 働き方・休み方改善ポータルサイト

実際には「エンゲージメント」は多義的に使われることが多く、人事領域においても同様です。そのため、自社においてエンゲージメントを高める取り組みを進める際には、自社における「エンゲージメント」の定義を明確にすることから始める必要があります。各社の統合報告書などを参照すると、ワークエンゲージメントの要素を重視する企業、従業員エンゲージメントを中心に据える企業、両者を組み合わせて独自に指標化する企業など様々です(調査ツール提供会社で算出されるエンゲージメント指数をそのまま活用する企業もあります)。

エンゲージメント調査とは?

以上を踏まえると、エンゲージメント調査とは、従業員の組織や仕事に対する主体的な関与度や貢献意欲を定量的に把握するための調査です。具体的には、組織への共感や愛着、仕事を通じたやりがいや成長実感、自発的な行動意欲などを測定し可視化する点に特徴があります。

日本生産性本部の調査結果(2026年4月10日発表)「人的資本経営の浸透・ 従業員認知に関する調査 ~ワーク・エンゲージメント、生産性、心理的安全性を高めるには~」を見る ↓

従業員満足度(ES)とエンゲージメントの関係

では、ESとエンゲージメントは、全く別物と考えるべきものでしょうか。下図のように従業員満足度(ES)とエンゲージメントを軸として、従業員がどのようなタイプになるか4象限に分けて考えてみると2つの概念の関係性がよりイメージしやすくなります。

①「従業員満足度・高 × エンゲージメント・高」:“いきいきと主体的に働いているタイプ”

職場環境への満足度が高く、かつ仕事に対しても強い意欲・情熱を持っており、組織にとっても理想的なタイプといえます。積極的に提案・改善を行うなど、組織の成長に大きく貢献する存在です。組織への愛着も深く、そのポジティブな姿勢は周囲のメンバーにも良い波及効果をもたらします。
組織としては、彼(女)らの高いモチベーションを維持・向上させるアプローチが求められます。より大きな裁量権を与える、新規プロジェクトのリーダーへの抜擢など、新たな成長機会を継続的に提供することが重要です。

②「従業員満足度・低 × エンゲージメント・高」:“責任感・使命感を支えに働いているタイプ”

自身の役割・仕事に対する責任感や使命感が強く、主体的に業務に取り組む一方で、会社の制度や職場環境に対して何らかの不満を抱えているタイプです。一見すると優秀な人材ですが、無理を抱え込んでいることも多く、何かのきっかけで、「燃え尽き症候軍(バーンアウト)」や突然離職してしまうリスクが高い「離職予備軍」ともいえます。
組織としては、最も損失リスクが高く、最優先で対処すべき従業員タイプといえます。彼(女)らが抱える不満の要因(評価への納得感、業務過多、人間関係の摩擦など)を早急に特定し、環境改善に取り組むことが重要です。

「従業員満足度・高 × エンゲージメント・低」:“組織は好きだが、仕事は受け身のタイプ”

職場の人間関係や労働環境には満足しており、職場に対する居心地の良さを感じていますが、自発的な挑戦や役割以上の行動には消極的なタイプです。指示された業務は着実にこなしますが、現状維持を好む傾向にあります。長期的にみると、外部環境の変化に適応できず、組織のイノベーションや生産性向上の原動力にはなりにくい人材と捉えることもできます。
組織としては、「心理的な居心地の良さ(ぬるま湯)」に甘んじないよう、内発的な動機づけを高めるような施策を検討していく必要があります。これは、人的資本経営の文脈において、投資家がエンゲージメントを重要視する理由の一つでもあります。

「従業員満足度・低 × エンゲージメント・低」:“組織に距離を置いているタイプ”

組織や職場環境に対する不満が強く、仕事への熱意や貢献意欲も失われている状態のタイプです。組織との心理的距離が遠く、必要最低限の業務にしか関与しません。周囲にネガティブな発言を広めるなど組織風土に悪影響を及ぼすリスクもあります。離職の可能性は高いともいえますが、転職の意欲もなく、組織に居座るケースも考えられます。
組織としては、彼(女)らが抱える不満の根本原因を把握し、会社として改善できる点があるかを探ることが第一歩です。継続的なサポートを行っても改善が見られない場合は、配置転換や今後のキャリアの再考を含めた毅然とした対応も視野に入れる必要があります。
このように従業員満足度(ES)とエンゲージメントは、異なる概念ですが、どちらか一方のみを高めればよいというものではなく、相互に関係し合うもので、双方を高めていく必要があることがわかります。

日本生産性本部が公表した「組織のウェルビーイング を測定する新たな指標」についての発表内容を見る ↓

まとめ

ここまで整理してきたように、従業員満足度(ES)とエンゲージメントは、異なる概念ではありますが、重なり合う部分も多いことがわかります。実際、各社が提供する「ES調査」や「エンゲージメント調査」には共通する設問が多く含まれています。
いずれの調査を実施するにしても、設問の設計や結果の位置づけ次第で、同じ調査であっても得られる示唆は大きく変わります。例えば、仕事のやりがい、成長実感、組織への共感・愛着といった項目は、エンゲージメントを把握するうえでも重要な指標です。NiserESでも、設問設計や分析の工夫によって、エンゲージメントの状態やその背景要因まで一体的に捉えることができます。 調査は、実施すること自体が目的ではありません。結果をもとに課題を特定し、現場との対話を深め、具体的な改善施策につなげてこそ意味があります。自社の課題に応じて、仮説設定から設問設計、分析、活用までを一体で考えて進めていくことが、従業員満足度とエンゲージメントの双方を高め、持続的な組織づくりにつなげる第一歩となるのです。

執筆者:日本生産性本部 コンサルティング部 鈴木 駿介

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