サービス産業生産性協議会(SPRING)では、2026年2月24日に「サービス品質のばらつきをなくし、自身の成長を感じられる『育成体系づくり』セミナー」を開催しました。講師には、人材育成・サービス品質向上の専門家であり、ホテルチェーンにて全社の教育を担当した経験を持つ、 Bergamot Hospitality代表の岡本直子氏に登壇いただきました。岡本氏は、「OJTの属人化」「研修のやりっぱなし」「理念が現場に浸透していない」といった現場で起こりがちな課題を取り上げ、それらに対する実践的な対応策を、具体事例とともに紹介しました。

宿泊業界を取り巻く人手不足の実態と人材育成が必要な理由
サービス業の現場において、「あるスタッフの対応は素晴らしかったが、別のスタッフでは残念だった」といった声がお客様から寄せられることは珍しくありません。サービス品質の「人・店舗によるばらつき」は、人材育成の体系づくりが必要であることを示す明確なサインです。
宿泊業では約80%の事業者が人手不足を感じ、欠員率は約6%と全産業平均の約2倍に達しています。そのほか、高い離職率や労働人口の減少、働きたい人の価値観とサービス業の働き方のミスマッチなどの要因が重なり、採用だけでは解決しない構造的な課題が続いています。


経営理念を軸にした「育成体系」のつくり方
岡本氏は、育成体系の前提として「背骨=経営理念」を据える重要性を示し、理念・ビジョン・バリュー・クレド(行動指針)が一貫していて初めて、現場の判断がそろい、品質が安定するという考え方を説明しました。また、参加者には自社の理念等と「浸透度」を書き出すワークを行い、現場に理念が落とし込めているか、現場とのズレを可視化しました。
クレド(行動指針)を浸透させる施策と情報開示の工夫
過去の岡本氏の実践事例として、役職・部門を超えた10数名でプロジェクトを組成し、クレド(行動指針)を策定した取り組みを紹介しました。クレドの作成にあたっては、アルバイトを含む全従業員にアンケートを実施し、「大切にしたい行動・うれしかった接客」について聞き取るなど現場起点で磨き上げました。クレドの完成後はカード化し、従業員に対して入社時等の機会に、その意味を丁寧に説明するとともに、朝礼等で短く振り返る運用に変更しました。さらに従業員満足度調査は半年に1回、委託先も含めて実施し、結果を会議で検討したうえで「誰が・いつまでに・何をするか」を取りまとめ、従業員全体へ開示し、納得感を高める工夫を紹介しました。
トップと現場をつなぐ人事・教育担当の役割
経営層が発信に不慣れな場合は、人事・教育担当が「仕掛け人」になることも必要だと語りました。たとえば、口下手なトップには、従業員に伝えるべき論点や現場の声を事前に渡し、話しやすい“きっかけ”を作る、交流機会を増やして相互理解を促すなど、トップの言葉を現場に届かせるための伴走支援について、岡本氏の経験をもとに説明しました。
育成体系を機能させる3つのポイント
最後に、参加者からは、育成体系の抜け漏れを防ぐ方法について質問があり、岡本氏は「求める人材像から逆算し、現場・人事・経営で擦り合わせた上で、運用しながら更新する」ことが重要だと述べました。
1.共通言語を作る
2.浸透度を測る
3.結果と打ち手を開示して改善を回す
本セミナーでは、品質のばらつき解消と育成の納得感を両立する具体的な道筋が共有されました。