効果的なCS調査(顧客満足度調査)とは:その手法やポイントを解説

CS調査

CS調査のすすめ方:顧客満足を可視化し、成長へつなげる道

企業経営において「顧客満足(Customer Satisfaction:CS)」は、単なる評価指標ではなく、持続的成長の原動力となる重要な概念です。顧客が満足することは、再購入や口コミ、ブランドロイヤルティの向上につながり、結果として企業収益や市場シェアの拡大にも結びつきます。顧客満足の実態をどのように把握し、どう活用していくか――その「調査のすすめ方」には、さまざまな工夫が求められます。

顧客満足とは何か?

そもそも顧客満足とは、「製品またはサービス自体が喜ばしい水準の消費関連の充足をもたらした」(注1 Oliver, 1997)状態を意味します。この「満足」は主観的な感情であるため、可視化するには調査という手段が必要です。そして、満足度が高ければ高いほど、顧客は企業への信頼感を強め、リピートや推奨といった行動に結びつきやすくなります。

調査の意義と全体フロー

CS調査は「現状把握」と「改善への第一歩」の両輪として機能します。調査によって、顧客の声やサービスのボトルネックが明らかになり、戦略立案や業務改善に具体的な方向性を与えます。CS調査の実施方法は多種多様ですが、一般的な流れは以下の通りです。

顧客満足度調査のすすめ方
・調査企画
・調査票設計
・調査実査
・調査分析・報告

1.調査企画

  • 調査目的の明確化(例:サービスの課題抽出、社内KPIの設定)
  • 調査手段の決定(Web調査、郵送調査など)
  • 対象者の選定と範囲の決定(例:過去半年以内に利用した関東在住者)
  • スケジュールの策定

CS調査の第一歩は、調査の目的を明確にすることです。たとえば、「サービスに対する評価の現状を把握したい」「特定のサービス品質要素が満足度に与える影響を知りたい」「リピーターの傾向を明らかにしたい」といった具体的な目的を設定することが、調査全体の質を左右します。漠然と調査を実施した場合には、知りたいことが明確にならず、結果として得られるデータが有効活用できない問題に直面する可能性があります。
また、この段階で、使用する媒体(Web、郵送、対面など)、対象とする顧客層や調査の範囲を明確にしておくことが肝要です。

2.調査票の設計

  • 調査目的と整合する設問構成
  • サービス品質(例:接客、商品、施設)や満足度、ロイヤルティなどの指標を設問化

調査票の設計は単に質問を並べる作業ではなく、「どのような情報を得て、どう分析するのか」という最終アウトプットを想定した設計が求められます。たとえば、「店舗スタッフの接客対応が若年層に評価されていない」という仮説があるならば、それを裏付けるための設問(例:設問「店舗スタッフの接客対応は適切である」、回答者属性「あなたの年齢を教えてください」)が必要です。一方、自社サービスの現状を把握することが目的の場合、サービスプロセスを網羅的に設問に反映させる必要があります。
調査票の設計をゼロから進めるのは難しいですが、ネットや書籍で類似調査を調べたり、過去の学術研究(例:SERVQUAL)を参考にしたり、生成AIを活用することも有効な手段です。

3.調査の実施

  • 自社保有リスト(メールアドレス、LINE登録など)や調査会社モニターの活用を検討
  • 回収目標数(回収率)を設定
  • Web画面や郵送等による配信
  • 回答収集(低回収率時の督促や再送も検討)

対象者に調査票を届け、回答を集めます。近年では自社が保有する顧客リスト(メールアドレスやLINE登録情報など)を活用してWeb調査を行うケースが増えています。また、一定の回収率を目標とし、必要に応じて督促や追加送付を行う体制を整えることも成功の鍵となります。
回収率は、顧客との関係性、設問数などによって大きく変わります。一般的に顧客との関係性が近い場合(BtoBなど)、回収率が高くなります。また、設問数が多くなるほど離脱者が増えていきますので、設問数は少なければ少ないほど良いとされています。なお、回収率を上げるために謝礼を支払う場合があります。
近年は、マイクロソフト社などの業務用アプリケーションで、アンケート作成アプリケーションが提供されています。調査実施の敷居は低くなっていますので、ぜひ活用しましょう。

4.調査分析・報告

  • 単純集計・クロス集計による現状把握
  • 相関分析やIPA(重要度・パフォーマンス分析)による課題の特定
  • 高評価項目と低評価項目を比較し、改善優先度を明確化
  • 社内報告会を実施

まずはローデータを単純集計し、基本的な傾向を把握します。そこからさらに一歩進んで、クロス集計による属性間の比較や、相関係数を用いた関係性の分析、そして重要度-満足度マトリックス(IPA)を活用した優先課題の特定など、目的に応じた多角的な分析が行われます。たとえば「接客の評価は高いが、満足度との相関が低い」場合、その項目は改善の優先順位が低い可能性があります。一方、「施設・設備の評価が低く、満足度への相関が高い」場合、改善の対象となり得るでしょう。

単に数字を並べるのではなく、現場での理解と行動につながる形で示すことが重要です。たとえば、「回収者のうち40%が『価格が高い』と回答した」という事実だけでなく、「価格の満足度は低く、全体満足度との相関が強いため、今後の施策として価格改定の再検討や付加価値の訴求が求められる」など、示唆を具体的に提示します。こうした報告は、経営会議や現場の改善活動、従業員教育の場などで積極的に活用されるべきです。

相関係数を用いた分析について
IPA(重要度・パフォーマンス分析)の図
  1. 出典:Oliver, R.L. (1997) Satisfaction: A Behavioral Perspective on the Consumer. The McGraw-Hill Companies, Inc., New York. ↩︎

執筆者:日本生産性本部 顧客価値創造センター 浅野 太郎

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