日本生産性本部は2025年7月17日、第77期「経済情勢懇話会」の7月例会を都内で開催(オンライン併用)した。当日は、「欧州から見る今後の世界のゆくえ」をテーマに、兒玉和夫・フォーリン・プレスセンター理事長(元欧州連合日本政府代表特命全権大使)が講演した。
兒玉和夫・フォーリン・プレスセンター理事長が講演

(元欧州連合日本政府代表特命全権大使)
冒頭、兒玉氏は、国際政治分析・理解の基本的スタンスとして、「力」「国益」「価値」は、国家の行動動因の3要素であることや、主権国家間において展開される国際政治の本質は、「国益最大化を目指す国家間の闘争」であること、欧州連合はそもそもソ連の脅威への対処とドイツの軍国主義化脅威への対処から始まったこと、EUは「普遍的価値の共同体」と「平和価値の共同体」を明記していることなどを説明した。
そのうえで、2025年の今、国際社会は、「安全保障秩序崩壊の危機(プーチン露大統領が開始したウクライナ侵略戦争、ハマスによる対イスラエル・テロを受けたイスラエルによるハマス殲滅・ガザ破壊、根底にあるイスラエルによる二国家解決拒否)」「グローバリゼーション後退の危機(対中サプライチェーンの安全保障確保、トランプ2.0のMAGA戦略=不法移民の取り締まり強化、反移民感情の高まり)」「米国主導の平和構造(パックス・アメリカーナ)の崩壊(普遍的価値ではなく米国の利益を最優先にする安保戦略への変更~世界の警察官の役割の放棄はオバマ、バイデン、トランプと引き継ぐ)」の三重の危機に直面していると指摘した。

21世紀の人類が直面する5つの「大潮流」(メガトレンド)
また、21世紀の人類が直面する5つの「大潮流」(メガトレンド)として、
- 普遍的価値としての「自由と民主主義」の地球規模の拡大(思想上のメガトレンド)
- 「産業資本主義」(一人当たり所得の持続的拡大)の深化と拡大
- グローバリゼーション(地球上がフラットに、国境が消滅すること)
- 「人口動態の変化」(産業化がもたらした豊かさは地球上における途上国の人口爆発をもたらした、同時に、先進国では少子高齢化の進行)
- 産業化がもたらした気候変動(地球温暖化を含む) を挙げた。

トランプ大統領の2期目の船出から読み取るべきメッセージについては、「戦後80年間に及び米国がその構築と維持に最大の貢献をなした国際秩序維持のコストは、余りにも米国にとって不公平なものであり、これまでの関係は、公平の観点から『リバランス』すべきである」という主張であり、トランプ大統領の「リバランス」の要求を全面に据えた交渉においては、日本も「何が公平なのか」を今一度問い直すことが求められていることや、トランプ大統領との取引において重要なことは「何がフェアか」の議論を突き詰めることであり、そこに交渉妥結の鍵があることを主張した。
中国における、投資規制の内外差別、国有企業優遇策、強制技術移転については、EU、米国、日本の立場は共通していることや、日本は米欧日という三極を通じた対中関係のマネジメントを追求すべきことも指摘した。
兒玉氏は最後に、日本が国際社会に復帰が認められた2年後の1958年の2度目の外交青書は、「日本の国是は、自由と正義に基づく平和の確立と維持にあり、この国是に則って平和外交を推進し、国際正義を実現し、国際社会におけるデモクラシーを確立することが、わが外交の根本精神である」と定義しており、今こそ、この国是を思い返すべきだと強調した。

経済情勢懇話会は、わが国を取り組まく経済・社会の情勢を広い視点から研究し、経営の判断や指針構築に役立てることを目的に開催している。第77期は10月から来年3月まで開催する。対象は、企業・団体のトップマネジメント・経営幹部。

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生産性新聞2025年11月15日号:「第77期 経済情勢懇話会 第1回」掲載分