農業・食品版Society5.0の実現

食品産業技術総合研究機構
久間和生理事長
日本生産性本部は2025年12月18日、第77期「経済情勢懇話会」の12月例会を都内で開催(オンライン併用)した。当日は、「科学技術イノベーション創出と食料安全保障の取組~農業・食品版Society5.0の実現」をテーマに国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)理事長の久間和生氏が講演した。
農研機構は常勤職員3286人(うち研究職1741人、2025年4月現在)、予算950億円(2023年度)の組織で、育種、栽培、スマート農業、環境、気候変動、バイオ、農業AI、データ連携基盤 遺伝資源収集・配布、防疫、地域農畜産業の振興、種苗生産などの業務を行っている。ブドウの「シャインマスカット」やリンゴの「ふじ」、サツマイモの「べにはるか」なども開発した。

2018年に理事長に就任した久間氏は、
- 農産物・食料の安定供給と自給率向上
- 農業・食品産業のグローバル競争力強化と輸出促進
- 農業の生産性向上と地球環境保全の両立
に貢献することによって、農業・食品版「Society5.0」をスピーディに実現することを組織目標に掲げている。
久間氏は、農研機構では、高温耐性に優れた多収の極良食味水稲新品種「にじのきらめき」を開発し、6県の奨励品種、21県の産地品種銘柄に認定され、生産量が急増していることや、品質に優れる日本品種に米国品種の多収性を導入し、極多収大豆4品種を開発し、従来の日本品種と比較して40~80%の多収を実現していることを説明。農業者の減少・高齢化の進行下において農業生産性を向上するため、農業の機械化・無人化、データ駆動型農業の社会実装を推進し、生産性向上、コスト削減、農家所得増加を定量的に実証していること、NTTグループと連携し遠隔営農支援システムを開発し、東北地域のタマネギ栽培で実証しており、イチゴ、トマト、露地野菜等への展開を計画していること、長期貯蔵技術と鮮度評価技術による革新的流通技術と、データの徹底活用によるサプライチェーンの最適化で食品ロスの削減を目指していると強調した。

ビジネスコーディネーター制度の設置
産業界との連携では、ビジネスコーディネーター制度の設置により、資金提供型共同研究が大幅に増加していることや、農業デジタルトランスフォーメーション、バイオテクノロジー、ヘルスケア食品等の分野で新産業、ビジネスモデルの構築を推進し、グローバル産業競争力強化に貢献していることを説明。農業界との連携では、標準作業手順書を作成して研究成果を農業界に展開していることや、農業技術コミュニケーターと開発担当者が一体となって普及活動を推進していることなどにふれた。
久間氏は産業界に期待することとして、「イノベーション創出(経済・社会にインパクトを与える課題を設定し、基礎から実用化まで、一気通貫で出口を目指した研究開発を行う)」「多様な人材の育成と流動化(次代を担う若手が産業界のリーダーとなるよう育成する)」「異分野融合の強化(産学官や企業間の連携で異分野融合を強化して、単独ではできないイノベーションを創出する)」を挙げた。
経済情勢懇話会は、わが国を取り組まく経済・社会の情勢を広い視点から研究し、経営の判断や指針構築に役立てることを目的に開催している。第77期は2025年10月から2026年3月まで開催する。対象は、企業・団体のトップマネジメント・経営幹部。

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生産性新聞2026年2月25日号:「第77期 経済情勢懇話会 第3回」掲載分