【サービスイノベーションの挑戦】第6回:ジェクトワン

国土交通大臣賞 アキサポ

所有者の手間なく、「空き家」の悩みを解決する「アキサポ」で、第5回日本サービス大賞の国土交通大臣賞を受賞したジェクトワン代表取締役の大河幹男氏は、生産性新聞のインタビューに応じた。空き家が大きな社会問題としてクローズアップされる中、不動産業界が二の足を踏んでいた「空き家」の活用にいち早く取り組み、問題の解決に先鞭をつけた。

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空き家問題は解決できる

ジェクトワンは2009年、渋谷の小さなビルの一角で創業した。不動産会社は、ファミリーマンション、ワンルームマンション、アパート、ビル、ホテルなどそれぞれ単一カテゴリーに特化するのが一般的だが、同社が扱う物件は住宅、宿泊施設、商業施設、店舗、老人ホームなど多岐に渡る。

この「マルチカテゴリー」の強みを生かし、2016年に空き家解決サービス「アキサポ」を開始した。空き家の悩みに対して寄り添い、活用や買い取りなどの様々な選択肢の中から最適なプランを提案し、所有者の手間なく、悩みを解決するのが特徴だ。 空き家は物件ごとに特性や課題が異なる。周辺地域を回って綿密なヒアリングを行い、最適なコンバージョンを企画、提案する。住宅、オフィス、店舗、倉庫などの開発スキームを持つ企画力で、年々反響が増加し、行政や企業・大学との協業にも積極的に取り組んでいる。

今では都心だけではなく、地方の「空き家」にも対象を広げるなど、「空き家問題解決のリーディングカンパニー」を目指している。大河氏は「『アキサポ』を日本全国の空き家解決のインフラサービスへと育てていきたい。空き家問題は、必ず解決できると確信している」と意気込む。

「活用」という選択肢

アキサポを立ち上げたのは、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行され、空き家が大きな社会問題としてクローズアップされたためだ。
当時の不動産業界における空き家対策といえば、単なる「空き家管理」か、売却を目的とした「空き家セミナー(仲介業)」しかなかった。それでは根本的な解決にはならないし、何より「愛着ある実家を手放したくない(売りたくない)」という所有者の心情に寄り添えていないと感じた。そこで、所有者の金銭的・時間的なコストをゼロにし、売却や解体ではない「活用」という第3の選択肢を提供するサービスを考案した。

「空き家」問題に正面から取り組もうと考えた根底には、大手デベロッパー時代に感じていた「建物主体で計画する開発事業への違和感」がある。大河氏は「商業や工業が適している土地に住居を建ててしまうような乱開発ではなく、その土地や地域ニーズに合った建物を造ることこそが本来の姿だ。アキサポに取り組むことで、こうした商慣習に風穴を開けることができればと考えた」と振り返る。

阪神・淡路大震災で、木造家屋密集地域で多くの人が亡くなったことにも心を痛めた。「災害に強いまちづくり」を進めることも不動産会社の使命だと強く感じ、事業の原点となっている。

営業からPR戦略に転換

アキサポの実装には、2つの大きな壁が立ちふさがった。1つ目は社内外からの反対と資金調達の壁だ。
不動産事業は銀行から融資を受けてレバレッジを効かせるのが常識だが、空き家活用は不動産売買ではないため融資が受けられない。そのため、最初は自己資金を持ち出して事業を行うしかない。同業他社からは「なんでわざわざ利益にならないことをやるんだ」と疑問視され、社内からも「そんなリスクを取ることはやめてください」と猛反対された。

しかし、同社にはすでにソリューション事業やリノベーション事業での安定した売上基盤があった。その利益をアキサポ事業への先行投資として回すことで、アキサポが軌道に乗るまでの時間を稼ぐことができた。大河氏は「地道に活用実績を積み重ねた結果、現在では事業実績が認められ、複数の地方銀行等から事業資金の融資を受けられるようになった」と話す。

2つ目は、空き家情報の獲得と信頼構築の壁だ。サービス開始当初は、空き家を探して飛び込み訪問をしたり、電話をかけたり、DMを3000件ほど送ったりしたが、反響はほぼなかった。空き家の所有者は、自分の意志で情報を取捨選択している人が多く、直接的な営業をしても効果がないことに気付き、パブリシティ効果を狙ったPR戦略へと舵を切った。
テレビや新聞などの取材を積極的に受け、アキサポの社会的な意義などを取り上げてもらうことで、空き家所有者に「自分にもメリットがある有益なサービスだ」と認知・信用してもらえるようになった。

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AIで空き家の流通改革

アキサポを日本全国の空き家解決のインフラサービスへと育てるための具体的な戦略が「AI・DXの活用」だ。アキサポで培ったノウハウと生成AI技術を融合させたAI空き家流通プラットフォーム「空き家のコタエ」を開発した。
このサービスにより、流通市場に乗りにくかった空き家の価値(売却価格・賃貸活用費・解体費用)を多角的に可視化し、所有者の意思決定を支援する。

アナログで行ってきた調査や査定業務をAIで合理化・効率化することで、「クリエイティブな活用提案」や「人間ならではのキラリと光る仕事」にリソースを注力する。 大河氏は「究極のゴールは『空き家をなくすこと』だ。空き家をネガティブな『負動産』として放置するのではなく、新たな魅力を持つ『価値動産(AKIYA)』へと生まれ変わらせる。住宅を非住宅(カフェやシェアオフィスなど)に転用して新たなサードプレイスを創出するなど、不動産の最適化を通じて地域社会の活性化に貢献していきたい」と決意を示した。

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生産性新聞2026年6月5日号:「サービスイノベーションの挑戦第6回」掲載分
登場人物の所属・役職は新聞掲載時のものです。

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