厚生労働大臣賞「Medii」
オンライン専門医相談サービス「Medii Eコンサル」で第5回日本サービス大賞の厚生労働大臣賞を受賞したMedii代表取締役で医師の山田裕揮氏は、生産性新聞のインタビューに応じた。医師でも診療が難しい難病や希少疾患などを中心に、限られた専門医の知見や経験を最大化する新しい医療の仕組みを提供し、より良い医療を全ての人が受けられる世界の実現を目指す。
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専門医療を全ての患者に~専門医に無料で相談
「Medii Eコンサル」は、主治医が診断や治療方針に悩んだ時に、高度な知見と経験を持つ各領域のエキスパート専門医に気軽に相談できるサービスだ。医師は無料でチャット形式によって相談でき、検索による情報収集だけではクリアにできない臨床の疑問や不安を解消できる。
約2000人規模の専門医のネットワークがあり、全診療科の対応や、迅速な回答が可能だ。
また、クライアントとなる製薬企業は、ジェネリック医薬品の普及により、患者数が多いプライマリ医薬品中心の収益構造から、がん、難病、希少疾患、免疫疾患など、高度で専門的な治療が必要な領域のスペシャリティ医薬品を中心とした市場への移行が進んでいる。
「これらの薬は医師でも扱いが難しく、MRや広告宣伝による従来のマーケティング手法だけでは処方が広がらない。Mediiが橋渡し役となり、専門医が寄り添ってアドバイスすることで、特別な薬を必要な患者に届けられると考えた」。
専門医の知見が共有されることにより、早期診断が促進され、最適な薬剤が患者に届く。これは同時に、薬剤市場の拡大と地域の医療インフラの整備につながる。企業とともに、社会的な価値を創造しながら経済的な価値を生み出し、拡大再生産していく持続的な取り組みを実現する。

自らの難病治療経験が原点に
山田氏は、難病の診療にあたることの多いリウマチ膠原病内科医であり、自身も難病を抱える患者だ。医師として、患者として、「難病」に向き合い、医療構造に存在する課題を肌で感じてきた。多くの患者を、診断や治療に関する不安や苦しみから救える仕組みをつくりたいという強い気持ちが経営の原動力だ。
専門医資格を取得した後、和歌山で直接患者の力になろうと日々診療していたが、1人で診る患者の数や専門領域は限られる。「社会全体でみた時に、全国のより多くの患者の課題を解決するためには医療の仕組みを変えなくてはいけない」との結論に至った。
「死ぬまでに如何に社会に大きなインパクトを残せるか?」が山田氏の個人的な命題だ。医系技官として厚生労働省に行くことも考えたが、「ITや革新的な技術を用いた仕組みづくりが重要なのに、構造上それが難しい」。
NPOや社団法人を設立するという方法もあるが、「イノベーションの事業規模を鑑みて持続可能な仕組みをつくること、そのスピード感には限界がある。最終的に自分の中で残ったのは起業することだった」。 自身も患者として適切な診断を受けるのに9年かかった。「診断や治療に複数の医療機関を受診したり、時間や経済的な負担をかけさせたりしないことが重要」と考え、「どんなに稀で診断が難しい疾患であっても、すべての患者が納得のいく医療を受けられる世界」の実現を目指し、Mediiを創業した。

共通の志を掲げ、共創
頭で描いた「Medii Eコンサル」の仕組みが回り出せば、社会課題の解決に向けた大きな一歩になると確信していた。しかし、創業したのはコロナ禍真っ只中の2020年。オンラインを中心に専門医や病院の主治医、製薬企業の一人ひとりに対して、共通の志である「一人でも多くの患者さんを救いたい」という思いを伝え、共創を呼びかけ続けることで、少しずつ実績を積み上げてきた。
現在の医療はあらゆる専門領域が細分化し複雑に進化していて、全ての領域で最新の知見を目の前の患者に提供し続けることの負担感が現場医師には年々増している。特に、難病においては患者数が限られるため十分な経験が積めない。
近年、製薬会社は、スペシャリティ領域の新薬の開発に力を入れ、その結果、発売にこぎつけられる新薬が多数登場しているが、医師側が、適切に使いこなせるほどの経験を積むのは容易ではない。
「限界を迎えつつある医療現場の構造的問題を、信頼できる専門医に相談する持続可能な仕組みとしてサービス提供することで、その限界を突破していく。私たちはそんな世界を目指している」。
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社会課題に挑み未来創る
AIをはじめとする最新のテクノロジーは、産業界に革命的な変化を与えようとしている。それは医療界も例外ではない。しかし、山田氏は、医師の仕事の全てをAIが代替することはできないと考えている。
「最終的に医師の役割は臨床の意思決定コーディネーターになる。責任を持って診断治療の意思決定をし、信頼関係を持って、患者に納得してもらうこと。人が人間である限り、人である医師に求められることとは何か、を追求し続ける必要がある」。
さらに、「ドラッグ・ロス」(海外ですでに承認・使用されている有効な医薬品が、日本国内では開発や承認申請に至っていない)や、「ドラッグ・ラグ」(海外で承認・販売されている医薬品が日本で承認・使用できるようになるまでに時間差がある)の解決にも挑む。 「現場で何が必要か、構造的な問題を深く、早く知り、仕組みの種をつくるのは私たちの仕事だ。そして、Mediiの仕組みを多くの医師に使ってもらうことで、『誰も取り残さない医療』を実現したい」。

和歌山県立医科大学医学部を卒業後、慶應義塾大学大学院医学研究科博士課程修了。自身も不治の難病を抱えている経験をきっかけに、難病患者が多い膠原病内科で患者を支えたいと考え、聖路加国際病院や慶應義塾大学病院などで勤務。2020年にMediiを創業
生産性新聞2026年4月15日号:「サービスイノベーションの挑戦第2回」掲載分
登場人物の所属・役職は新聞掲載時のものです。

「生産性」という言葉を、ニュースや職場で耳にすることはありませんか?いま社会全体で注目されている一方で、その本当の意味は以外と知れらていません。