顧客満足(CS)・顧客体験(CX)の向上は、今や業種問わずどの企業でも取り組むべき課題ですが、自社内だけで推進していくには限界があります。本稿では、日本生産性本部 サービス産業生産性協議会(SPRING)の知見を活かして取り組みを加速させ、成果を上げた3社の事例を紹介します。外部で得た知見を活用し、いかに組織を動かしたのか、CS活動を成功させる外部の知見の活かし方を紐解きます。
事例① オリエントコーポレーション:顧客の声を「集める」から「活かす」へ。SPRINGへの参加が自社の取り組みを前へ
VOCをCS・CX向上につなげるには
多くの企業がお客さまの声(VOC)を収集していますが、それを具体的な改善やCS・CX向上につなげ、成果を出すのは容易ではありません。「何から手を付ければよいか」「どう社内を説得するか」という悩みに対し、オリエントコーポレーション(会員入会:2018年)の事例は重要な示唆を与えてくれます。
同社は「その夢の、一歩先へ Open the Future with You」というパーパスを掲げ、VOCをCS・CX向上につなげる取り組みを強化しています。その原動力となったのが、SPRINGが主催する異業種交流会(SPRING Cafe)への参加です。この異業種交流会を同社は単なる知識習得の場に留まらせず、他社のVOC事例を「リアルな実践知」としてベンチマークに活用し、自社に最適な分析ツールの導入検討や、VOC改善フローの構築に取り組んでいます。また、他社の具体的な取り組み状況を根拠として提示することで、社内調整を円滑に進める推進力としたのです。
CS活動を実現するための近道
S活動を構想で終わらせず、実行に移すためには、自社の枠を超えた客観的な視点と、実践者同士のフィードバックが欠かせません。他社のリアルを自社の推進力に変えること。それこそが、形骸化しないCS活動を実現するための近道です。
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株式会社オリエントコーポレーションのCS活動をご紹介します。
事例② スカイマーク:判断に迷ったとき、立ち返る場所がある―SPRINGという羅針盤―
自社のCS活動の客観化
2020年度および2022~2024年度にJCSI(日本版顧客満足度指数・国内長距離交通部門)で1位に輝き、日本サービス大賞(国土交通大臣賞)を受賞したスカイマーク(会員入会:2018年)の躍進の背景には、自社のCS活動の正しさを証明し、社員の背中を押す存在がありました。CS担当者が直面する大きな課題の一つに、「自社の施策が本当に正しいのか」という迷いがあります。同社はSPRINGが提供する学術的知見を、自社の取り組みを答え合わせする場として活用しました。
客観的な指標に基づく質の高いサービスが継続の鍵
確かな理論に基づく確信を得ることで、組織全体が迷いなく一歩を踏み出せるようになったのです。また、コロナ禍という航空業界にとって未曾有の苦境において、JCSI 1位や日本サービス大賞の受賞といった外部からの客観的評価は、社員にとって大きな心の拠り所となりました。
値や受賞という形に見える成果は、「自分たちの力は通用する」という社員の誇りとモチベーションの向上につながると実感しました。社内だけでは得ることができない客観的な指標や、異業種との切磋琢磨は、CS担当者の視野を広げるだけでなく、組織の誇りを育みます。迷ったときに立ち返る指標を持つことが、質の高いサービスを継続するための鍵となります。
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スカイマーク株式会社のCS担当者のインタビュー記事をご紹介します。
事例③ 積水化学工業:SPRINGの知見と熱量が、組織を前に進める
CSの理論を現場の実務に活用するための方策は
CSと品質は不可分であるという考えのもと、積水化学工業(会員入会:2016年)は「CS品質経営」を掲げています。多様な事業を展開する同社にとって、CS向上の取り組みを自社内だけで完結させるには限界がありました。そこで同社が活用したのが、SPRINGを通じた外部の知見です。
CS担当者が直面する大きな課題の一つに、学術的な理論をいかに現場の実務に落とし込むか、という点があります。同社が求めていたのは、単に正解を提示されるのではなく自社の課題に対して「では、どう使うか」を共に探索してくれる伴走型の支援です。専門家との対話を通じて理論と実務の距離を埋めることで、納得感のある施策へと結実させています。
社内外のネットワーク構築が重要
異業種交流会での悩みや試行錯誤の共有は、自社だけでは得られない視点をもたらしました。この体験は、社内のCS担当者が孤立しないための社内版ネットワーク構築という新たな構想にもつながっています。
CS推進は、時に孤独な取り組みになりがちです。しかし、外部の知見を実践の伴走者として活かし、他社の熱量を取り込むことで、組織全体に前向きな変化を生み出すことが可能になります。自社だけで抱え込まず、外部に目を向けることが次なるCS経営への第一歩となります。
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積水化学工業のCS担当者の声をご紹介します。
まとめ
3社に共通するのは、外部知見を単なる情報で終わらせず、自社を動かす「推進力」へと転換している点です。CS担当者が抱く孤独や迷いは、組織の外に目を向け、他社の試行錯誤や専門家の知見に触れることで、確かな手応えに変わります。自社だけで抱え込まず、実践の「武器」や「伴走者」を持つこと。それこそが、形骸化しないCS活動を実現し、次なる成長へ踏み出すための第一歩となります。
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