中国との適切な距離感を模索

日本生産性本部は7月14日、第78期「経済情勢懇話会」7月例会を都内で開催した。現代中国研究家で日本国際問題研究所客員研究員の津上俊哉氏が「中国の行方、日本の対応~経済的視点を中心に~」をテーマに講演し、中国経済の構造的課題と世界経済への影響、日本が取るべき対応について解説した。
津上氏は、中国経済は不動産バブル崩壊だけではなく、地方財政の悪化も深刻だと指摘した。リーマン・ショック後の大規模な投資政策により、借金依存の過剰投資が続いた結果、投資効率が低下し、「資産にも負債にもゴミが積み上がった」状態になったと分析した。また、富が政府や国有企業に偏り、家計や民営企業に十分回っていないことも構造問題として挙げた。本来は民営企業の育成や家計所得の引き上げ、不良資産処理などの改革が必要だが、中国共産党の統治体制そのものに関わるため、抜本改革は進みにくいとの見方を示した。

その結果、中国ではデフレや若者の就職難、少子高齢化など、日本のバブル崩壊後を思わせる現象が広がっているという。一方で中央財政は健全で国債発行余力も大きく、「中国経済は崩壊ではなく長期停滞の局面に入る」と述べた。
一方、中国経済の強みとしてハイテク産業の躍進を挙げた。EVや電池、半導体などで世界トップクラスの競争力を持ち、その背景には豊富な理工系人材や巨大市場、充実したサプライチェーンがあると説明。ただ、地方政府との密接な関係が過度な価格競争を招き、安値輸出や巨額の貿易黒字を通じて世界経済への影響力が一段と高まっていると指摘した。
最後に津上氏は、日本は自衛力強化を進めながらも中国との対話の窓口を維持すべきだと提言した。また、日本では中国を嫌う人が多いが、企業は中国市場を簡単には手放せず、中国技術を取り込みながら事業を展開する「ステルス経営」が進んでいると紹介。「安全保障と経済を切り分け、中国との適切な距離感を模索することが重要だ」と締めくくった。

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生産性新聞2026年9月15日号:「第78期 経済情勢懇話会 第4回」掲載分