【サービスイノベーションの挑戦】第10回:イノベーション・マネジメント・プラットフォーム

優秀賞・審査員特別賞 イノベーション・マネジメント・プラットフォーム

企業の新規事業を包括的に支援・共創するイノベーションマネジメント・プラットフォームで第5回日本サービス大賞の「優秀賞」と「審査員特別賞」をダブル受賞したRelic(レリック)代表取締役CEO、北嶋貴朗氏は、生産性新聞のインタビューに応じた。生成AI時代の日本企業のイノベーションを加速させ、グローバルで勝てる事業を共創することを目指す考えを明らかにした。

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イノベーションの民主化を加速 新規事業開発を伴走支援

Relicは、SaaS型イノベーションマネジメント・プラットフォーム「Throttle(スロットル)」、SaaS型クラウドファンディングプラットフォーム「ENjiNE(エンジン)」、事業アイデア創出SaaS「IDEATION Cloud(アイディエーションクラウド」、出島共創スキーム「DUALii(デュアリー)」を中心に、新規事業開発を共創型で包括的に伴走支援している。
スロットルは、新規事業創出プログラムや社内ベンチャー制度、オープンイノベーションやアクセラレーションプログラムなどを含む、すべての新規事業開発やイノベーション創出のための活動に最適化されたイノベーションマネジメント・プラットフォームで、大手企業で利用が増えている。
エンジンは、初期費用ゼロ円でスピーディに自社クラウドファンディングサイトを構築できるプラットフォームで、日本の強みであるエンタメコンテンツが、国内外から資金を調達する成功例も出ている。

アイディエーションクラウドは、世界中の資金調達済みスタートアップの成功事例を集約したファクトデータベースと、自社がこれまでに蓄積してきた知見やノウハウを掛け合わせて構築した新規事業開発AIを元に、簡単に成功率が高い事業アイデアを考える。「コンサルティングファームに依頼するよりも、低価格でスピードのある事業開発が可能だ」。
デュアリーは大企業の新規事業開発における推進力や検証スピードの課題を解消するために設計された出島共創スキームだ。顧客に代わりRelicが「代理検証・代理運営」の立場で、事業主体としての機能を一気通貫で担う。企業やマンションに設置する無人コンビニの「コンビニエンススタンドTukTuk」を事業化するなど、成功例が生まれている。仮にうまくいかなかったとしても、人材やノウハウが社内に蓄積されるメリットがある。

北嶋氏は「既存事業はいずれ衰退していく。日本企業が今後、持続的に成長し、生存していくことを可能にするには、新しい事業にチャレンジしていく必要がある」と話す。しかし現実は、社内に新規事業の経験者は乏しく、ノウハウ・知見も蓄積されていないことが多い。

属人的なコンサルの限界

北嶋氏は新卒で入社したベンチャー企業が、リーマンショックで経営危機に陥った経験がある。既存事業が崩れたことが大きく響いた。新規事業の立ち上げに取り組もうとしたが、うまくいかなかった。
「日本企業にはゼロからイチをつくることに長けている人材は乏しく、ノウハウも体系化されていない」ことを痛感した。新規事業の経験を体系的に積みたいと考え、新規事業を専門に手掛けるコンサルティングファームに転職した。コンサルタントという立場で様々な企業を見てきたが、一方でその限界も感じた。「属人的なコンサルティングだけでは、広くあまねく、日本企業に対してイノベーションを起こす力を実装する〝イノベーションの民主化〟を実現することはできない」。

2013年、新規事業やオープンイノベーションにチャレンジしているメガベンチャーのDeNAに参画し、新規事業の責任者を担当した。「様々な立場で新規事業に向き合い、自分なりに体系化できるようになった」。そして2年後、高校生の時から抱いていた起業に挑戦する夢を実行に移した。

コンビニエンススタンドTukTukのイメージ

資金調達の課題克服

起業したばかりの頃は資金調達に苦心することもあった。自分たちのような伴走者が不要な状態を作るために、事業開発の伴走支援で稼いだ資金をプロダクトに投資しており、開発投資が嵩むことは避けられなかった。事業で稼いだ資金とデットファイナンスだけで、コンサルティングサービスとプロダクト開発の両方を伸ばしていかなければならなかった。

資金が必要になった時に、政府系金融機関から「資本性劣後ローン」を借りて救われた経験を生かし、オープンイノベーションデットと呼ばれる新しいファイナンスを独自開発した。包括的な業務提携・協業と私募ハイブリッド社債の引受けを組み合わせた手法だ。困難の中から資金調達の課題解決の糸口を見いだした。

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生成AI登場はチャンス

生成AIの登場によって、SaaSの省人化が可能になることから、「SaaS is dead(サーズの役割は終わった)」論が広がっているが、北嶋氏はそれを否定する。「生成AIの登場で、プロダクトでできる部分が広がり、理想の形へと近づいている。Relicにとっては逆にチャンスだ」。
一方で、人間が行っていたサービスを、プロダクトだけで解決するまでに仕上げていくことはそう簡単ではない。「人が活動する部分をゼロにできるプロダクト・テクノロジーを生み出すことが究極の理想だが、難易度は非常に高い。イノベーション領域はプロダクトでできるのか、人とテクノロジーが行う分野をどこで線引きするのか、試行錯誤しながらやっている」。

今後の展望について、北嶋氏は「今のプロダクトを磨き、ラインアップを増やすことも視野に入れている。全国18都道府県に拠点があり、大企業を始め、全国の中堅中小企業にも提供して、”イノベーションの民主化”を進めたい。日本発で、グローバルで勝てる事業を生み出すようなプラットフォームを目指す」と意欲を示している。

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生産性新聞2026年7月15日号:「サービスイノベーションの挑戦第10回」掲載分
登場人物の所属・役職は新聞掲載時のものです。

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