【サービスイノベーションの挑戦】第18回:トラストパーク

優秀賞 「車泊(くるまはく)」

シェアリング・着地型観光DXサービス「車泊(くるまはく)」で第5回日本サービス大賞優秀賞を受賞したトラストパークは、災害発生時のボランティア向けの施設としても活用できる「車泊」の拠点の拡大に取り組んでいる。同社のソリューション部次長である西岡誠氏が、生産性新聞のインタビューに応じ、「車泊」を始めた経緯や今後の展開などについて明らかにした。

熊本地震で事業化加速

「車泊」は、車で地域を周遊したい人や、様々な事情でホテルの利用が困難あるいは気兼ねする人が、車での寝泊まりを楽しむことを目的としたシェアリングサービスだ。公共施設などの未利用施設や不稼働時間帯のスペースとトイレなどを活用し、電気を付加価値として提供する。
このサービスを企画したきっかけは、2015年にグループ会社のRVトラストがキャンピングカーの製造・販売・レンタル事業を開始したことだった。
創業者から「キャンピングカーで泊まれる駐車場を作れないか」という要請が、ソリューション部に届いた。

西岡氏は「通過型観光地や過疎地域など宿泊できる施設が乏しい地域で、本来は宿泊施設ではない駐車場をシェアリング活用し、地域に滞在する価値をつくることができる」と考え、車中泊サービス事業の計画を進めた。
そんな中で、翌16年に熊本地震が発生した。地元のボランティアは日帰りが可能だが、県外から駆け付けたボランティアの宿泊場所が必要になった。しかし、震災で宿泊施設が不足し、トラストパークでも、宿泊できるキャンピングカーを提供するなど、被災地を支援した。「この時の支援を通じて、一時避難場所やボランティアの滞在場所の不足などの課題を解決できると考え、本格的に『車泊』の事業化を加速させた」。

開発資金の確保に苦戦

開発資金を確保するため、総務省の委託事業に応募し、事業を提案することを決めた。
産官学の事業として、コンソーシアムを組成する必要があった。西岡氏は「提案までの期間が短い中で、学識者など仲間集めが大変だった。コンサルタントに依頼せず、自力で書類を書いたのでペーパーワークにも苦労した」と振り返る。

採択に向けては広域連携を条件として、10地域で検討したが、予算に合わせて、無理のない範囲で取り組む地域を7地域に絞ることになった。「実証実験なので、データを取ったり、利用者を確保したりする必要があるが、地域ごとに施設の運営主体や料金徴収のための仕組み作りなどの事情が異なる。この点も初期段階でとても苦労した」。

宿泊施設の代替手段

その後、「車泊」は民間施設での導入も拡大していく。車中泊として活用するには、「トイレ」があることが条件であり、公共施設の場合は、道の駅や公園のトイレを使う。民間では温泉施設の駐車場などに導入するケースが増えている。
また、地方では人手不足により、人材の確保が難しい。そのため、無人で利用できるように、キャッシュレス・非接触運用可能なオンラインで完結する手軽で安価なシステムを採用している。ウェブサイト上で予約・決済を完結、利用当日は二次元コードでチェックインする仕組みだ。

「電源だけではなく、Wi-Fiが使えたり、ドッグランを併設していたり、付加価値のある施設が増えてきている。コロナ禍で旅行のスタイルが多様化し、様々なユースケースがある」という。
最近では、コロナ後のインバウンド需要の拡大とインフレの進行により、宿泊施設の予約が取りにくく、利用料が高騰している。「ホテル代が高いから、キャンピングカーで泊まりたい」「推しのアーティストのコンサートがあるのにホテルが取れない」などの困りごとの解決手段として、「車泊」のニーズが高まっている。

こうした中、ローソンは、グローリーや日本RV協会と連携し、千葉県で、コンビニの駐車場で車中泊ができるサービスの実証実験を進めている。今年7月には、対象地域を埼玉県、静岡県、愛知県へ拡大した。
トラストパークが九州で始めた車中泊のサービスに、大手企業が参入した形だ。西岡氏は「旅行スタイルの変化によって、車中泊が旅行者の選択肢の1つとして選ばれるという意味では、私たちにとっても大きなチャンスだ」と話す。

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九州起点に拠点拡充

地元の九州では、自治体や民間の垣根を越えて広域連携を図る地域活性化プロジェクト「ONE KYUSHUサミット」が行われている。トラストパークは、車で九州一周旅行をする周遊旅行者が、どこでも車中泊ができるように、「車泊」の施設を拡充していく。
また、関東、東海エリアなどの人口密集地は稼働率が九州よりも高く、採算が合うので、他の民間企業と組んで、「車泊」の施設を拡充する計画だ。人口が少ない地域であっても、温泉地は「車泊」と相性が良い。中四国や、関東の郊外などでも展開の可能性を探る。

今年7月にも、熊本地震が発生した。熊本の南部を中心に9カ所の公共施設で、「車泊」施設を県外ボランティアの活動拠点として無料で開放した。
西岡氏は「道の駅などの公共施設では、ボランティア支援に対する抵抗感がないが、民間の施設はそれぞれの考えで経営しているので、それを考慮する必要がある。災害時の対応をどうするかは、あらかじめ決めておくなど、様々な課題があることがわかった」と更なる改善に意欲を示す。

「車泊」は平時と有事の両方に対応できるのが特徴だが、地震や大雨など大規模災害はいつ、どこで起こるか分からない。西岡氏は「災害時の支援拠点は、全国各地にあるべきで、国の防災庁の政策や自治体の防災計画を注視して、積極的に提案していきたい」と話している。

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生産性新聞2026年10月25日号:「サービスイノベーションの挑戦第18回」掲載分
登場人物の所属・役職は新聞掲載時のものです。

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