【サービスイノベーションの挑戦】第5回:ATM窓口

総務大臣賞 セブン銀行

セブン銀行は、銀行の口座開設や住所変更などの手続きが「24時間・365日」ペーパーレスで完了する「ATM窓口」サービスで、第5回日本サービス大賞総務大臣賞を受賞した。プロジェクトを担当したATM+企画部長の柏熊俊克氏が生産性新聞のインタビューに応じ、コンビニATMが持っているサービス力と、今後のさらなる進化について語った。

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みんなに便利なデジタル社会を目指す~コンビニで手続きが可能

セブン銀行は2026年4月10日に設立25周年を迎えた。日本で初めての小売業発の銀行として出発し、常識を超える挑戦によって革新的なサービスを生みだしてきた。今では、セブンーイレブン店舗に約2万3000台、商業施設・駅・空港・病院などの他の施設に5000台、計2万8000台以上を展開する金融インフラへと成長した。銀行が店舗統廃合やATM網の縮小を進める一方で、キャッシュレス決済比率が高まるなど、金融業界を取り巻く環境は激変している。そんな中で、2022年、柏熊氏はATMを使った新たなサービスを生み出す新プロジェクト「+Connect」(プラスコネクト)のリーダーに抜擢された。

プラスコネクトは「ATMが、あらゆる手続き・認証の窓口となる」世界を目指し、銀行やノンバンク、事業会社、行政等幅広い業界に向けて提供する各種サービスの総称だ。
「舟竹泰昭・セブン銀行会長(当時社長)から『失敗を恐れず思い切って取り組んで欲しい、君に任せた』と言われ、不安もあったが、意気に感じて取り組んだ」と振り返る。

ATM窓口サービス

技術でセキュリティ確保

受賞サービスである「ATM窓口」は、ATM上でユーザーから本人確認書類や属性情報を取得し、顧客企業に還元するものだ。取得した情報は犯罪収益移転防止法に適合した目検チェックなどを実施し、納品することが可能なため、セキュアな状態で口座開設や諸届変更、本人確認の手続きなどに活用できる。
このサービス提供の背景には、第4世代のコンビニATMの技術力がある。高性能カメラや顔認証、スキャナーにより、安心・安全で便利な非対面での本人確認を実現する。金融分野だけでなく、様々なサービスを活用できるプラットフォームの提供を目指している。

金融機関や役所の窓口へ行く負担、オンライン申請の難しさなど、手続きに関するハードルは思った以上に高い。柏熊氏は「高齢で遠出が難しい、仕事や育児で時間が取れない、スマホ操作が苦手などの困りごとがある中で、近くのコンビニに行けば、手続きが何でもできる世界を作りたかった」と話す。

実店舗とDXの橋渡し

2022年当時、コロナ禍やマイナス金利もあり、金融機関は、合理化を進める経営判断に伴って、預金者との接点が減ってしまうという課題を抱えていた。柏熊氏は「セブン銀行の持つ2万8000のATMを自分たちのチャネルとして使うことができるのは魅力的ではないか」と考えた。

金融機関にとってリアルの店舗とスマホアプリは両極端のサービスと言えるが、「コンビニのATMがちょうど中間の存在となり、両者を橋渡しする」という構想を描いた。この構想を銀行に提案すると、世界観への共感は得られるも、採用に至る銀行は少なかった。多くの銀行はあらゆる機能をスマホアプリひとつで完結させる金融DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める戦略であり、コンビニATMは二の次という意向に見えた。

それでも、柏熊氏には顧客層を広げられる確信があった。簡単に、ATM画面や本人確認機能をアレンジできる基盤サービスを開発し、実証実験を行うことで、とにかく使ってもらい、実績を示した。また、セブン銀行が目指す世界観を、担当者はもちろん、経営層間でも粘り強く訴えるなど、地道な営業活動を展開することで、認知が広まった。その結果、2023年9月にサービスを開始し、本人確認が可能になったことで、金融機関はもちろん、人財派遣会社や通信サービス申込時にも活用でき、様々な企業が利用するようになった。

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誰もが使えるサービスに

ユーザーの利用を増やすには、とにかく使いやすさが重要だ。「誰一人取り残されない」デジタル社会の実現を目指すことを掲げ、使いやすさにはとことんこだわった。さらにセキュリティを強化し、安全・安心であることをアピールした。
例えば、IC付きの本人確認証明を読み取ることで、ユーザーの入力の手間を省く一方で、ATMに搭載された高性能カメラとICの写真データをマッチングすることで、偽造を見抜き、なりすましを防ぐ。
柏熊氏は「デジタルが苦手な人だけでなく、デジタルネイティブ世代も使っている。便利であれば、誰にでも使ってもらえることが分かった」と話す。

2026年3月末には、同じコンビニのファミリーマートが、約4年かけて、既存のATM(約1万6000台)をセブン銀行の最新ATMに順次置き換えると発表した。現金入出金や各種キャッシュレス決済のチャージ機能が強化されるほか、「プラスコネクト」による手続きも利用可能になるという。
ATMが「現金の入出金を行う機械」という枠を超え、暮らしの安心や便利さを支える社会インフラとなることを目指す。銀行がATMを縮小する中で、セブン銀行はコンビニATMのネットワークをさらに充実させる。

柏熊氏は「これから力を入れていきたいのは、行政サービスとの連携だ」と話す。愛知県豊田市は全国の自治体で初めて、セブン銀行ATMで税金の口座振替申込みを行える「ATM口座振替登録サービス」を導入した。
柏熊氏は「行政手続きのデジタル化が進んでいる今だからこそ、『どこでも・誰でも・同じように』使える窓口の役割はますます高まっていくはずだ。地域や行政、企業と協力し、コンビニATMの可能性を広げ、新しい価値をつくり続けたい」と意欲を示している。

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生産性新聞2026年5月25日号:「サービスイノベーションの挑戦第5回」掲載分
登場人物の所属・役職は新聞掲載時のものです。

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