【サービスイノベーションの挑戦】第8回:akippa

国土交通大臣賞 アキッパ

駐車場マーケットプレイス「アキッパ(akippa)」で第5回日本サービス大賞国土交通大臣賞を受賞したakippa代表取締役社長CEOの金谷元気氏は生産性新聞のインタビューに応じた。「誰もが駐車場に困ることなく、自由に移動できる世界」の実現を目指し、全国に常時5万5千件以上の予約できる駐車場(2025年12月、平均アクティブ掲載数)と、会員登録数540万人(2026年5月末時点、貸主は含まない)を持つ「アキッパ」のさらなる拡大に意欲を示した。

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困りごとから事業開始

「アキッパ」は、個人宅などの使われていない駐車場を、ユーザーがアプリで予約し、15分もしくは1日単位で利用できる仕組みだ。花火大会などのイベント時の駐車場不足を解消するほか、駐車場を予約制にすることで来場時間を分散し、交通渋滞解消にも貢献している。

金谷氏は2009年に営業代行で起業し、携帯電話などの営業を請け負っていた。「営業代行業は依頼された企業の商品を扱うので、営業数字しか見ない。営業数字のプレッシャーに追われるだけで、世の中のために何かをする、という事業の本来の目的が見いだせなかった」という。
4年後の2013年、何のために会社をやっているのかを深く考えた。そして、「電気や水道などのインフラのように、世界中の人たちにとって、なくてはならないサービスを作りたいと思い、その時初めて会社のミッションを『〝なくてはならぬ〟をつくる』とした」。

当時の約30人のメンバーで、「生活していて困ること」を約200列挙した。ある社員が挙げた「コインパーキングは現地に行ってから『満車』だと知るため困る」という項目が目に留まった。「コンサートや野球観戦の際にそういう経験をしたことがあって、これは解決すべき課題であると思った」。
調べてみると、個人の駐車場やマンションの駐車場は空いているところもあり、使っていたとしても、空いている時間帯もあることが分かった。そして、空いている駐車場と、駐車場を使いたい人をつなぐ「アキッパ」を2014年4月にスタートし、翌年社名も変更した。

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社長より優秀な人を採用

得意の営業を展開して、駐車場の開拓を進め、全国で約700カ所を掲載してもらうことができた。しかし、マーケティングの経験がなかったのでユーザーは思うように集まらず、売上は伸びなかった。
そこで、「社長より優秀な人を採用しよう」と決めて、マーケティングやプロダクト開発、会計などの専門分野に秀でた人たちを採用した。金谷氏自身は、以前は何でも自分で決めて自分でやるタイプだったが、優秀な人たちに任せる方針に変えた。「自分で行う重要な意思決定と、日々のオペレーションの権限を分けることによって、事業展開のスピードが上がった」。

そのうえで、特定地域に集中的に店舗を出店し、そのエリアでの市場シェアやブランド認知度を最大化する「ドミナント戦略」に切り替えた。まず、大阪市内で集中的に駐車場を集めると、大阪で一気に売上が増加した。その後、東京や名古屋、福岡でもドミナント戦略を展開し、稼げる体質へと転換することができた。

渋滞解消にも貢献

民家の駐車場を使うので、トラブル対応にも万全を期す必要がある。24時間365日のコールセンターを設置し、2025年からはAIチャットも導入した。問い合わせのうちの9割以上は定型的な問い合わせなので、AIで解決できると考えている。これによって、人が対応する数は約半分で済むようになった。

事故があった場合は、自動車保険でドライバーが処理するが、庭の植木鉢に対して誰がぶつけたかわからないようなケースもある。こうした事態にも対応するため、損害保険ジャパンと駐車場シェアリングにおける「駐車場シェア専用保険」を共同開発した。利用者の自動車保険が適用されないトラブル時でも、オーナーの損害を補償する。

使える駐車場を増やして、決済はスマホで完結するほか、駐車場の事前予約を可能とすることで、大規模イベント開催当日などの駐車場確保の困りごとや、渋滞、迷惑駐車の解消にも貢献できるのがアキッパの特徴だ。
Jリーグチームが試合の際に、スタジアムの周辺が渋滞する問題が、地域にマイナスになっていることを聞き、アキッパがスタジアム周辺で駐車場を増やし、渋滞解消に一役買った。成功例が評判を呼び、その他のプロスポーツクラブや、イベントを開催する地方自治体などの関心も集めるようになった。

さらなる困りごと解決へ

人員規模も業務委託・派遣などを合わせて総勢約120人まで拡大した。さらに、地方の花火大会などでは、地元のパートナー会社と協力することで、駐車場の開拓スピードも上がっている。
さらに、駐車場を貸したいオーナーが、スマホアプリで簡単に会員登録し、自分の駐車場をアプリに掲載することができる「オーナーモード」も好調だ。一度駐車場の掲載を完了すれば、あとは貸出日に予約が入るとアプリに通知が来る仕組み。決済完了しているため直接金銭のやりとりも必要ない。

金谷氏は「誰もが駐車場に困ることなく、自由に移動できる世界を作りたい。国内をさらに充実させ、世界展開も視野に入れる。そして、増やした駐車場に自動運転車を設置したい。高齢化が進む中で、ドライバーの免許証返納が増える一方、バス路線の廃止が相次ぐ。タクシー会社も地方では後継者不足に悩む。行きたい場所に行けない地域が増えつつある。自動運転車を誰もが使いたいときに使えるようにしていきたい」と話す。
これからも〝なくてはならぬ〟サービスをつくり、みんなの「こまった!」をなくす。その積み重ねで世界をよりよくするつもりだ。

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生産性新聞2026年6月25日号:「サービスイノベーションの挑戦第8回」掲載分
登場人物の所属・役職は新聞掲載時のものです。

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