【サービスイノベーションの挑戦】第13回:ecbo

優秀賞 ecbo cloak(エクボクローク)

荷物預かりサービス「ecbo cloak(エクボクローク)」で、第5回日本サービス大賞優秀賞を受賞したecbo代表取締役社長の工藤慎一氏は、生産性新聞のインタビューに応じた。「エクボクローク」の日本全国でのサービス拡大をさらに加速させる一方で、海外市場での展開も急ぐ方針を明らかにした。

エクボクロークのイメージ

荷物預かりの新サービス

「エクボクローク」は、「荷物を預けたい人」と「荷物を預かるスペースを持つ店」をつなぐ革新的なプラットフォームだ。スマホの事前予約・決済で、カフェ・美容室・郵便局・駅構内など、多種多様なスペースに簡単に荷物を預けられる新しいサービスモデルを実現している。店舗側は追加コストなしで新規収入源と来店機会を獲得でき、ユーザー側は大型荷物対応や多様な預け場所の選択肢を得られる。

多言語対応と保険付帯でインバウンド観光客も安心して利用できる。また、観光客が旅先で利用するだけでなく、イベント参加時や日常生活における買い物など、様々なシーンで利用できる。観光インフラとしての役割に加え、地域の遊休資産活用による経済活性化への貢献が期待されている。
日本全国の主要都市で4,000店舗以上を展開しており、全国の各都市が抱えるコインロッカー不足の課題に対応している。2023年8月からは、初の海外展開として台湾でもサービスを提供している。

きっかけは外国人観光客

工藤氏は大学在学中に、Uber Japanの立ち上げに参画した。Uberは当時、世界中でライドシェアやタクシーの配車事業に取り組んでいた。「ライドシェアは新たな価値を生み出す革新的なサービスになる」と確信し、日本でのサービス展開にチャレンジした。Uber Eatsを先行的にサービスインした経験を経て、「世の中に存在しない新たなサービスを生み出したい」という思いが生じ、24歳のときに起業に踏み切った。

工藤氏がエクボクロークのサービスモデルを思いついたきっかけは、2016年ごろ、渋谷の街でインバウンド観光客の困りごとを聞いたことだった。
「荷物を預けたい」。大きなスーツケースを引きずりながら歩く観光客と一緒に、コインロッカーを探して歩き回った。何とか見つかったが、「こんなにコインロッカーの数が少ないとは…」と観光立国を目指す日本の課題を実感し、エクボクロークのサービスを社会実装する決意を固めた。

エクボクロークのサービスを拡大させるためには、荷物預かりに協力してもらえる店舗を拡大することが極めて重要だ。この営業活動においても、個人タクシーの運転手に声をかけて回ったUberでの経験が役に立った。
工藤氏は「協力してもらえる店舗を説得するには、パッションが大事だった」と振り返る。熱意を持って実現したい世界観を示しながら、店舗にもメリットがあることを粘り強く訴えていき、協力してもらえる店舗が徐々に増えていった。

コロナ危機で壊滅的打撃

ecboは、スタートアップが参加する国内外の多や入賞を果たし、資金調達や事業拡大の大きな転機として活用してきた。2018年にはJR西日本グループと業務提携し、翌19年には、JR東日本グループと連携するなど、多くのコインロッカーを抱える鉄道会社との連携を進めることができた。
さらに、インバウンドのニーズ拡大に対応し、サービスの成長の速度を速めた。空港や駅構内、郵便局、カフェなど、さまざまな施設に設置されるようになった。

工藤氏は「エクボクロークの強みは、利用者が荷物を預けるプラスアルファの体験ができることだ。たとえばカフェに拠点があれば、荷物を預けるついでにカフェを利用できる。これは事業者からすれば新規顧客の獲得につながるので、利用者と事業者の両方にメリットがある」と話す。

成長の速度を速めた矢先に、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大が世界中を襲った。工藤氏は「最初はすぐに感染は終息するとみていたが、1年、2年と長引き、インバウンドが消失したことにより、売上高が一時的に99%減少した」と振り返る。
当時、提携していた店舗の1,000店舗以上が閉店またはサービスから退会し、社員数も30人から2人へと激減するなど、事業売却も検討するほどの危機に陥った。

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危機を乗り越え再び成長

飲食店のデリバリー代行を展開するなど、一時的な業態転換で凌いでいる間に、感染が沈静化し、状況の好転に合わせてエクボクロークのサービスは息を吹き返した。インバウンドが再び増加し、荷物管理プラットフォームとして事業を復活・成長させている。
コロナ禍の厳しい局面を打開することができ、描いてきたサービスモデルが間違っていなかったことに確信を持った。

「エクボクロークは、社会インフラとして展開できるポテンシャルがある」とし、1年以内に国内1万店舗への拡大を目指す。さらに、エクボクロークのようなサービスは海外でも少ないことから、2030年にはグローバル40カ国への拡大も目標に掲げている。
物流業界では、ドライバー不足や高齢化、労働時間規制の強化、EC市場の拡大などにより、物流機能の維持が困難になる危機が指摘されている。工藤氏は「荷物を自宅まで届けるサービスはファーストクラスであり、エコノミークラスのためには集荷スポットを効果的に利用しやすくすることが重要だ」と話し、今後の物流改革でイニシアチブを握る構想を持っている。

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生産性新聞2026年9月5日号:「サービスイノベーションの挑戦第13回」掲載分
登場人物の所属・役職は新聞掲載時のものです。

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