【現場に定着するカスハラ対策コラム:第3回】カスハラ対応は「記録して終わり」にしない~再発防止と継続的な改善の進め方~

カスハラ対応の記録は、すでに多くの企業で残されている―難しいのは「その先」

「お客さまとのやり取りの記録は、もちろん以前から残しています。」

言うまでもなく、多くの企業で、カスハラ対策が始まるずっと前から当たり前に行われてきたことです。CRM(顧客関係管理)や営業支援システム、コールセンターの応対履歴など、使っている仕組みや名称はさまざまですが、お客さまとのやり取りを記録として残すこと自体は、特別なことではありません。
今回のカスハラ対策でも、こうした既存の仕組みを活用している企業が多いのではないでしょうか。例えば、カスハラに該当する事案が後から分かるようにフラグをつける。入力欄を1つ追加する。システムを変更するまでもない場合は、応対履歴の冒頭に【カスハラ案件】と入れる。まずは、それで十分だと思います。難しいのは、その先です。
カスハラ対策では、発生した事案を振り返り、再発防止につなげていくことが求められています。

・「改善していかなければならない。」
それは分かっている。
でも、実際には、
・「何を、どう、振り返ればいいんだろう?」
・「この事案から、何を改善すればいいんだろう?」
・「事案が起きるたびにマニュアルを変えること?(周知徹底が大変になってしまうのでは)」

……となると、意外と難しいものです。
今回は、対応完了した案件を組織でどう活かし、自社のカスハラ対策の次の一手につなげていくかを一緒に考えてみたいと思います。

集まったカスハラ事案から見えてくる、対策の改善ポイント

集まったカスハラに該当する事案を見ていくと、改めて考えさせられることがたくさん出てきます。

・上司への相談までに時間がかかり応対者が必要以上に疲弊した事案
・カスハラに該当するか判断が難しく、人によって対応が分かれた事案
・同じようなカスハラに関する報告が複数の職場から挙がっている事案
・1件しかカスハラは発生していないが緊急に対応・対策が必要な事案

こうしたものを少し距離を置いて眺めてみると、相談までに時間がかかる事案が続いているのであれば、
「相談窓口はあるけれど、相談するタイミングが分かりにくいのかもしれない」
「自分で対応した方が早いと思って抱え込んでしまっているのかもしれない」
などと考えることができます。

カスハラに該当するか判断が分かれる事案であれば
「判断基準が、まだ現場まで十分に伝わっていないのかもしれない」
「判断することにためらいがあるのかもしれない」
という課題が見えてくるかもしれません。

一方で、多く発生している事案だけが改善テーマとは限りません。たった1件のカスハラでも、従業員への暴言・威圧が非常に強い場合や、長時間の拘束や執拗な要求があった場合など「次の発生を待たずに対応すべき」ということもあります。集まったから見えることと、1件だからこそ見逃せないこと。その両方を見ながら、「今、どこに手を入れるか」を考えていきます。これは、まさに改善活動そのものです。

カスハラ対策のための新しい仕組みは不要~既存の会議・ISOに組み込む

今何が起きているのかを確認し、どこに問題があるのかを見つけ、どこから改善につながるかを考える。実際に対策をしてみて、その対策によって状況がどのように変わったのかを確認する。こうして考えてみると、カスハラ対策も、品質や安全、業務改善など、テーマは違っても、皆さんが日々取り組まれている改善活動と、基本的な考え方は同じなのかもしれません。
……だとしたら、カスハラ対策だけのために、新しい改善の仕組みを作らなくてもよさそうです。
定例の会議や業務レビュー、ISOなど、すでに会社の取り組みを振り返る仕組みがあるなら、そこにカスハラ対策も組み込んでいきます。そして、その中で実際の運用を振り返ります。

・以前より相談が早くなったか
・判断のばらつきは減ったか
・現場は対応しやすくなったか

最初から自社に合った仕組を作るのは難しいものです。
だからこそ、実態を見ながら、対策を少しずつ改善していくことをおすすめします。

カスハラ対策の実践状況チェックリスト【改善・再発防止策】

前回に続き、今回もカスハラ対策の実践状況を確認するチェックリストを用意しました。今回は、皆さんが普段から行っている改善活動の考え方もとにしています。(前回は「相談・通報体制」に関するチェックリストを公開。前回の記事はこちら ▶)

理念の強化 信頼を築く文化としてのカスハラ対策<ガイドライン:防止対策/被害者への配慮>
  ・対策をルールで終わらせず、職場文化として定着
  ・経営層・管理職・現場が一体で方針を共有・実践
  ・「正しく断る力」「冷静に対応する力」を組織全体で支援

チェックしながら、

「自社では、カスハラが起きた事案を、その後の対策の改善に活かせているか」

と、少し考えてみてください。対応が終わった事案からは、そのとき何が起きたのかだけではなく、今のカスハラ対策が実際にどのように機能しているのかも見えてきます。
終わった案件を単なる「過去の記録」とするのではなく、少しずつ次の改善に活かす。その一連の流れが当たり前になることも、対策が定着することの一つだと考えます。

次回は、視点を変えて、カスハラ対策を「人と人との関係」から考えてみたいと思います。
対応した従業員をどう支えるのか。そして、私たち自身も、会社を離れれば一人の消費者です。
対応する従業員としての立場と、一人の消費者としての立場の2つの視点から考えます。

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いつもコラムをご覧いただき、ありがとうございます。今後、みなさまの関心やお悩みにさらに寄り添った内容をお届けしていきたいと考えています。
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<筆者プロフィール>

日本カスタマーハラスメント対応協会 認定講師 酒井 由香 氏

大手住宅設備メーカーでの修理受付からお客さま対応部門に従事。BPOセンターの立ち上げを経て、お客さま相談室長として組織マネジメントを実施。その後、顧客接点業務向けシステム開発会社で、顧客対応窓口の応対実務に関する支援や、システム構築における運用面のサポートを担当。
2020年に『グレークレームを“ありがとう!”に変える応対術』(日本経済新聞出版)を共同執筆。2022年、日本カスタマーハラスメント対応協会に参画。
消費者を取り巻く、多くの業界団体から最新情報を得ながら 生活者の声を活かす仕組みづくりの支援を行っている。経営品質協議会認定セルフアセッサー取得。

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