JCSI第1回調査が示す「選ばれる企業」の条件
公益財団法人日本生産性本部のサービス産業生産性協議会(SPRING)は2026年6月9日、日本版顧客満足度指数(JCSI)2026年度第1回調査の結果を発表した。今回の調査は自動車販売店、飲食、カフェ、エンタテインメント、携帯電話、証券、そして特別調査としてMVNO(仮想移動体通信事業者)の7業種を対象に実施され、計20,890人から回答を得ている。 本稿では、今回の調査結果のなかでも特徴的な動向が見られた「飲食」「携帯電話」「エンタテインメント」の3業種に着目し、データから読み取れるポイントを整理する。
飲食業界|サイゼリヤが顧客満足スコア81.1で1位 – 「知覚価値」の強さ
飲食業種では、サイゼリヤが顧客満足スコア81.1でトップに立った。2位の木曽路(79.2)、3位のびっくりドンキー(77.2)、4位のモスバーガー(77.1)が続いている。
| 顧客満足スコア上位 1位 サイゼリヤ 81.1 2位 木曽路 79.2 3位 びっくりドンキー 77.2 4位 モスバーガー 77.1 5位 丸亀製麺 76.2 | [調査企業・ブランド]ランキング対象: <洋食>ガスト、カレーハウスCoCo壱番屋、ケンタッキー、サイゼリヤ、びっくりドンキー、マクドナルド、モスバーガー、ロイヤルホスト(8企業・ブランド) <和食・中華等>木曽路、餃子の王将、くら寿司、すき家、スシロー、はま寿司、松屋、丸亀製麺、吉野家、リンガーハット(10企業・ブランド) |
サイゼリヤの強み:物価高でも揺らがないコストパフォーマンス評価
注目されるのは、サイゼリヤのポジショニングだ。6指標の順位表を見ると、サイゼリヤは知覚価値(コスト・パフォーマンスの評価)で業種1位となっている。昨今の物価上昇局面においても、「払った金額に見合う質」という顧客の評価が高いことがデータから読み取れ、コストパフォーマンスへの徹底的なこだわりが満足度の高さに直結していると推察される。
木曽路に見る「感動指標」:和食ならではの体験価値
一方、木曽路は顧客期待・知覚品質・推奨意向いずれも業種トップとなっており、和食ならではの体験が、高い期待値とその充足につながっていると考えられる。また、感動指標(利用時の「びっくりした」「うれしい」などの経験を指数化したもの)においても木曽路が業種1位を記録しており、単なる「満足」を超えた感情的な感動体験が提供されていることがデータから示唆される。
業種全体の平均と比較しても、上位企業のスコアはおおむね75.0以上と高水準を維持しており、飲食業界が「選択肢の多さ」のなかで差別化を競う構造にあることが改めて示された。
JCSI6指標(飲食業種)スコア2026 上位企業のみ

JCSI6指標(飲食業種)順位表2026 上位企業のみ

※原則として、各業種の中央値以上の企業・ブランドを表示
※顧客満足1位企業を赤字または青字表記
携帯電話業界:povoが80.1で首位 – オンライン専用ブランドの優位性
携帯電話業種では、povoが顧客満足スコア80.1でトップとなり、2位LINEMO(73.3)、3位楽天モバイル(70.9)が続いた。
| 顧客満足スコア上位 1位 povo 80.1 2位 LINEMO 73.3 3位 楽天モバイル 70.9 4位 UQ mobile 67.8 5位 ワイモバイル 66.8 | [調査企業・ブランド]ランキング対象: <オンライン専用ブランド> ahamo 、povo 、LINEMO(3企業・ブランド) <大手キャリア(メインブランド、サブブランド)> au、ソフトバンク、ドコモ、 UQ mobile 、 楽天モバイル、ワイモバイル (6企業・ブランド) |
大手キャリアとの約10ポイント差が示すもの
特筆すべきは、大手キャリア(メインブランド・サブブランド)と、オンライン専用ブランドとの間に明確なスコア差が見られる点だ。大手キャリアサブカテゴリーの顧客満足スコア上位は楽天モバイル(70.9)、UQ mobile(67.8)、ワイモバイル(66.8)であるのに対し、オンライン専用ブランドのトップpovoは80.1と、約10ポイントの開きがある。
この差は、オンライン専用ブランドが「低価格×シンプルなプラン」という価値提供に特化することで、ユーザーの期待値に対する充足感が高まりやすい構造にあることと関係しているものと推察される。知覚価値(コスト・パフォーマンス)においてもpovoが業種トップを記録していることが、この解釈を裏付けている。
「失望指標」が高い業界構造とCS維持の難しさ
他方、失望指標(「がっかりした」「いらいらした」などの経験の指数)を見ると、携帯電話業種全体の平均は他業種と比較しても相対的に高い水準にある。スマートフォンが生活インフラとして当たり前となった今日、ひとたびサービスに不具合があった際の「失望」も大きくなりやすいと推察され、高い顧客満足を維持し続けることの難しさが、このデータからも読み取れる。
JCSI6指標(携帯電話業種)スコア2026 上位企業のみ

JCSI6指標(携帯電話業種)順位表2026 上位企業のみ

エンタテインメント業界:劇団四季・宝塚歌劇団が同点1位 – 「感動」が生む顧客満足
エンタテインメント業種では、劇団四季と宝塚歌劇団が顧客満足スコア82.9で同点1位となった。3位のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(78.5)以下を大きく引き離しており、「舞台芸術」という体験型コンテンツの満足度の高さが際立つ結果となっている。
| 顧客満足スコア上位 1位 劇団四季/宝塚歌劇団 82.9 2位 ユニバーサル・スタジオ・ジャパン 78.5 | [調査企業・ブランド]ランキング対象: 劇団四季、松竹、宝塚歌劇団、東京ディズニーリゾート、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(5企業・ブランド) |
6指標の全項目を見ても、劇団四季と宝塚歌劇団が顧客期待・知覚品質・顧客満足・推奨意向いずれも上位1・2位を占め、感動指標においても業種トップクラスを記録している。ライブエンタテインメントならではの「その瞬間だけ」の体験価値が、デジタルコンテンツが充実する時代においても、揺るぎない顧客満足を生み出していると推察される。
なお、国内のライブエンタテインメント市場については、近年の公演需要の回復と価格上昇が続いているとの報告もある(一般社団法人コンサートプロモーターズ協会等の各種業界データより)。こうした市場環境のなかで高スコアを維持していることは、両者のブランド力とサービス品質の高さを示すものと推察される。
JCSI6指標(エンタテインメント業種)スコア2026 上位企業のみ

JCSI6指標(エンタテインメント業種)順位表2026 上位企業のみ

次回(第2回)調査の見どころ
今回のJCSI第1回調査が示すのは、サイゼリヤの「価格と品質のバランス」、povoの「シンプルで裏切らない体験」、劇団四季と宝塚歌劇団の「感動の提供」というように、顧客満足向上へのアプローチは各社各様であるということだ。
JCSIは年間5回にわたり約40業種・約400企業・ブランドを対象に調査を実施している。次回(第2回)は2026年7月発表予定で、百貨店・スーパーマーケット・コンビニエンスストアなどの業種が対象となる。引き続き、業種を横断した顧客満足の動向を注視していきたい。
執筆者:日本生産性本部 顧客価値創造センター 浅野 太郎