人間の影響による温暖化とパリ協定後の現状

日本生産性本部は2026年6月16日、第78期「経済情勢懇話会」の6月例会を都内で開催(オンライン併用)した。
当日は、東京大学未来ビジョン研究センター教授の江守正多氏が、「気候危機にどう向き合うか」をテーマに講演した。
江守氏は、日本でも世界でも気温の上昇傾向が続き、年平均気温はたびたび大幅な記録更新をしていることにふれ、人間の影響による温暖化には疑う余地がないと指摘。温暖化によって洪水、海面上昇、水不足、熱波、生態系の損失、感染症、強い台風、食料不足、森林火災が起こっているが、科学的知識が増すほど気候変動リスクの認知が大きくなるとはいえないと説明した。
また、パリ協定(2015年採択)では「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保つとともに1.5度に抑える努力を追求する」ことになっているが、現状の温室ガス排出の削減ペースは全く足りていないと指摘。温室効果ガスの排出量が少ない開発途上国ほど気候変動の影響をより大きく受けるが、米国では気候変動の科学・政策に懐疑的・否定的な勢力(化石燃料資本、保守系シンクタンク等)が第2次トランプ政権で主流化していることなどを説明した。

「石器時代は石がなくなって終わったのではない」
一方で明るい兆しもある。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のデータによると、新設される発電設備の主流はすでに再生可能エネルギーへと移行していると説明。「必要な資金も技術の大部分も、人類はすでに持っている」とするIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最新報告書の見解を紹介し、問題は技術そのものではなく、社会全体の「転換スピード」にあると強調した。
日本については、2024年度の排出量が2013年度比で約28.7%減と着実に進む一方、市民意識には課題があると述べた。2015年の世界市民会議では、気候対策を「生活の質を高めるもの」と捉えた人が世界平均で66%に上ったのに対し、日本ではわずか17%で、逆に「生活の質を脅かすもの」と答えた人が6割を占めるなど、諸外国とは対照的な傾向であることを指摘。地球温暖化問題の解決の鍵は「技術」と「社会変革」の両輪にあると語り、「どんな社会に生きたいか」を一人ひとりが問い直す必要性を訴えた。
江守氏は、最後に「人類は『化石燃料文明』を卒業しようとしている。石器時代が終わったのは、石がなくなったからではない」と投げかけ、講演を締めくくった。

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生産性新聞2026年8月25日号:「第78期 経済情勢懇話会 第3回」掲載分