日本のコーポレート・ガバナンス改革の振返りとその後の変化

日本生産性本部は2026年5月12日、第78期「経済情勢懇話会」の5月例会を都内で開催(オンライン併用)した。
当日は、成蹊学園学園長の江川雅子氏が、コーポレート・ガバナンスの研究や複数の上場企業での社外取締役の経験、東京大学や成蹊学園の役員としての経営の経験などを踏まえ、「独立社外取締役の役割と取締役会の実効性向上」をテーマに講演した。
江川氏はまず、日本のコーポレート・ガバナンス改革を振り返って、取締役会の変化(独立社外取締役の増加とダイバーシティ向上、取締役会の議論の活性化と監督機能の強化)、株主に対する経営者の姿勢の変化(株主総会の活性化、株主とのエンゲージメント、株主還元の増加等)、政策保有株式の売却、株式報酬や業績連動報酬の導入等、機関設計の多様化(監査等委員会設置会社の急増、任意の指名・報酬委員会の増加)、独立社外取締役を選任する上場企業の割合の増加、株主総会の変化(株主提案の増加、議決権行使の厳格化等)などがみられることを指摘した。
独立社外取締役の役割と取締役会の実効性向上
独立社外取締役の役割については、自身が行った調査研究をもとに、日本企業の社外取締役は助言機能、米国企業の社外取締役は監督機能を重視する傾向があると説明。米国企業では取締役会以外の活動時間が長いこと、米国企業の社外取締役は強い当事者意識を持ち、自ら企業価値を向上させる提案・活動を行うことなどを指摘した。
また、取締役会の実効性向上に向けては、議題は数を絞り込み、重要な議題に時間をかけ、独立取締役の意見を反映し、年間計画を立てることや、事務局機能を強化すること(わかりやすい会議資料の準備、トップとの意思疎通、法務・会計・ガバナンス等専門性の高い人材配置等)、議長は自由に意見が言える雰囲気をつくる役割を担うことなどを挙げた。
加えて社外取締役の理解を深めること(取締役会資料の早期配布・事前説明、工場・研究所・営業所など現場の視察、社内会議への参加、社員や執行役員との交流、研修などへの参加等)や、CEO選解任はガバナンスの要諦であり、社外取締役を中心に客観的、中立的な議論を行うことが望ましいと指摘。取締役会の監督機能については、社外取締役の数と質の向上、指名委員会の権限の強化、独立取締役の連携と独立性の強化が重要であることも説明した。

「稼ぐ力」を強化
今後の課題については、ガバナンス改革は進んだが、日本企業の業績や市場での評価に結び付いていないので、「稼ぐ力」を強化する必要があることを強調。ポートフォリオ見直しの不足・設備投資やIT投資の不足・人材への投資の不足・経営人材の不足などの経営そのものの課題に加えて、資本効率の向上(ポートフォリオ見直し等による企業価値向上)、取締役会の監督機能の強化、中核人材及び取締役会のダイバーシティ、サステナビリティへの取り組みと情報開示を挙げた。その上で、取締役会の実効性向上のためにはトップの姿勢が重要であり、社外取締役は強い当事者意識と責任感を持つことが重要だと強調した。

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生産性新聞2026年7月5日号:「第78期 経済情勢懇話会 第2回」掲載分