「相談窓口はある。でも相談しづらい。」
「相談窓口の設置はできています。」
カスハラ対策についてのお話の中で、多くの企業の皆さまからお聞きするセリフです。一方で、その後にはこのような声も聞かれます。
・「相談窓口はあるのですが、ほとんど利用されていません。」
・「現場から相談が上がってきません。」
・「管理職が把握する頃には、大きな案件になっています。」
相談窓口の設置は法令でも求められています。しかし、「窓口があること」と「相談できること」は、必ずしも同じではありません。
本当に現場を支えられているのか。現場のために必要な窓口になっているのか。そうした視点で、相談・通報体制について考えてみたいと思います。
第1回のコラム「カスハラ義務化目前、まず点検すべきは「気づく仕組み」を見る ↓
相談・通報体制は、カスハラ対策の「仕組み」の一部
前回は、カスハラ対策の第一歩として、「仕組みの整備」についてお伝えしました。防止と対応の両立を支える仕組みとしてとても重要なのが、相談・通報体制です。
現場では、
・「これくらいなら自分で対応しよう。」
・「管理職も忙しいから。」
・「まだ相談するほどではないかもしれない。」
このような思いから、一人で対応を続けてしまうことがあります。しかし、こうした状況が続くと、小さな違和感が組織に共有されないまま、対応が長期化したり、担当者が疲弊したりすることにつながります。
だからこそ、相談窓口は「困ったときに使う窓口」ではなく、現場が一人で抱え込まないための仕組みとして考えることが大切です。
相談窓口の役割は一つではない~「心理的ケア」と「業務サポート」
一口に相談といっても、その目的は大きく二つに分けられます。一つは、対応した担当者を支える「心理的なケア」。もう一つは、対応中の担当者の判断を支える「業務上のサポート」です。
カスハラ対策における「相談窓口」というと、多くの方がまず思い浮かべるのは、被害を受けた担当者への心理的なケアではないでしょうか。顧客との難しいやり取りが精神的な負担として残ることを、多くの方が経験則として知っているからだと思います。
最近では、EAP(従業員支援プログラム)など外部の相談窓口を活用し、心理的なケアまで含めた支援体制を整える企業も見られるようになってきました。もちろん、このような支援はとても大切です。
一方で、それと同じくらい重要なのが、カスハラの対応中に担当者が判断に迷ったとき、周囲が組織的にフォローすることです。
・「このまま自分で対応を続けてもよいのだろうか。」
・「管理職に報告し、対応を引き継いでもらうべきだろうか。」
・「どのタイミングで担当を交代するべきだろうか。」
こうした疑問や迷いをすぐに相談できる環境を整えておくことで、担当者が一人で判断を抱え込むことを防ぎ、組織として一貫した対応を取ることができます。
相談・通報体制を考える際には、「対応した担当者の心を支える仕組み」と「対応中の担当者の判断を支える仕組み」という二つの視点から、相談窓口が機能しているかを確認することが重要です。
チェックリストで自社の相談・通報体制を確認する
相談・通報体制は、「窓口を設置した」ことで終わるものではありません。
例えば、
・現場が相談しやすい雰囲気になっているか。
・管理職が相談を受け止められる体制になっているか。
・業務上の相談と、担当者への心理的支援の両方が考慮されているか。
こうした視点で見直してみると、新たな課題が見えてくるかもしれません。
そこで、相談・通報体制や人への支援について確認するチェックリストを用意しました。相談窓口を「設置する」ことだけではなく、現場を支える仕組みとして機能しているか、ぜひこの機会に確認してみてください。
| 人への支援 | 従業員と顧客の双方を守る視点 <ガイドライン:被害者への配慮/相談体制の整備> |
| ・被害を受けた従業員へのメンタル・環境面での配慮 | |
| ・事実確認と説明において、顧客にも誠実・冷静に対応 | |
| ・「一方を守る=他方を排除」ではなく、双方尊重の対応文化 |
次回は、「対応済みの案件が会社の財産にならない理由」をテーマに、再発防止と情報共有の仕組みについて考えていきます。
みなさまの声をお待ちしています
いつもコラムをご覧いただき、ありがとうございます。今後、みなさまの関心やお悩みにさらに寄り添った内容をお届けしていきたいと考えています。
「こんなテーマを取り上げてほしい」「相談したい」「コラムの感想を伝えたい」など、みなさまの声をぜひお聞かせください。現場で感じている課題や日々の気づきなども含め、率直なお声をお寄せいただけますと幸いです。
【酒井氏が講師を務めるプログラム情報】
カスタマーハラスメント対策のポイント解説動画・資料も公開!
カスタマーハラスメント対策を進めるうえで押さえておきたいポイントを、動画と資料でわかりやすく解説しています。法改正の背景や対策の考え方、実践のヒントまで、初めて取り組む方にも役立つ内容です。
カスハラ対策「現場がわかる・動ける」実践づくりの推進ワークショップ

本セミナーは、カスハラ対策を「ルールを作って終わり」にせず、実際の職場で機能する仕組みへと見直すための実践型セミナーです。カスハラ対策の運用を通じて見えてきた課題や、会社の意図と現場の認識のずれ等を整理し、店舗・窓口・営業・コールセンターなど職場ごとの実情に合わせて、「誰が・いつ・どのように対応するのか」を明確にした「カスハラ対応フロー」を作成します。担当者が現場の従業員とともに考え、自社に適した対策方法を構築するための進め方についても学んでいただけます。
<筆者プロフィール>

日本カスタマーハラスメント対応協会 認定講師 酒井 由香 氏
大手住宅設備メーカーでの修理受付からお客さま対応部門に従事。BPOセンターの立ち上げを経て、お客さま相談室長として組織マネジメントを実施。その後、顧客接点業務向けシステム開発会社で、顧客対応窓口の応対実務に関する支援や、システム構築における運用面のサポートを担当。
2020年に『グレークレームを“ありがとう!”に変える応対術』(日本経済新聞出版)を共同執筆。2022年、日本カスタマーハラスメント対応協会に参画。
消費者を取り巻く、多くの業界団体から最新情報を得ながら 生活者の声を活かす仕組みづくりの支援を行っている。経営品質協議会認定セルフアセッサー取得。